早河シリーズ完結編【魔術師】
結局、菜々子から詳しい話は聞けなかった。桃色学園プリンセスに関してはよくわからなかったが、犯人の声に似ているコハクくんの声の確認はする必要がありそうだ。
犯人は隼人よりも身長の低い、推定で170㎝前後、声は桃色学園プリンセスのコハクくん似で若い男。
次の捜査会議の開始時刻は日付が25日に変わった午前零時から。待合室にいる早河に中断した話の続きを聞いて警視庁に戻れば捜査会議までの間、少しは仮眠がとれる。
早河は事件に関連した何かを掴んだ。しかし早河から知り得た情報は捜査会議では報告しない方が良さそうだ。
あの早河が長年信頼を寄せる上野警視にまで報告をタブーとするからには、よほど事情があるのだろう。
スマホが着信した。真紀は人のいない廊下の隅を選んでマナーモードを鳴らすスマホをタップした。
{杉浦です。お疲れ様です}
「お疲れ様。目撃情報の収穫はあった?」
杉浦刑事と芳賀刑事は犯行現場となったJSホールディングス付近で犯人の目撃情報を集めていた。
{はい。JSホールディングスの夜間警備担当の警備員が木村隼人が襲われた時刻にJSホールディングスの非常階段から降りてくる男を見たと証言しています。それが……その……}
杉浦は口ごもり、数秒の沈黙の後に発言した。
{警備員は暗くてハッキリとは見えなかったが非常階段を降りて来た男は中年の背が高い男だったと言うんです。自分が所持していた佐藤瞬の手配写真を見せると、この男に似ていると証言しました}
「佐藤に似ていた? 確かな証言なの?」
{確証はありません。でも他に有力な証言は出ていません}
佐藤瞬が木村隼人を殺そうとした?
そんなことが起こり得るだろうか?
坂下菜々子の証言では隼人を襲った犯人の特徴は、声質が男子高校生のアニメキャラクターに似た若い男。身長も成人男性の平均的な高さ。
佐藤の身長は12年前の情報だが、推定で180㎝。現在の年齢は45歳で若い部類とは言えない。
警備員の証言は菜々子の証言と不自然なほどに正反対だ。
「杉浦さん、証言した警備員の身元を洗ってくれる?」
{警備員をですか?}
「念のため。警備員の素性は上には報告せずに私だけに知らせて。お願い」
仮に警備員の証言通り非常階段から中年の佐藤に似た男が降りて来たとしても、隼人を襲った犯人は佐藤ではない。
菜々子か警備員、どちらか嘘をついている。そうとしか思えなかった。
犯人は隼人よりも身長の低い、推定で170㎝前後、声は桃色学園プリンセスのコハクくん似で若い男。
次の捜査会議の開始時刻は日付が25日に変わった午前零時から。待合室にいる早河に中断した話の続きを聞いて警視庁に戻れば捜査会議までの間、少しは仮眠がとれる。
早河は事件に関連した何かを掴んだ。しかし早河から知り得た情報は捜査会議では報告しない方が良さそうだ。
あの早河が長年信頼を寄せる上野警視にまで報告をタブーとするからには、よほど事情があるのだろう。
スマホが着信した。真紀は人のいない廊下の隅を選んでマナーモードを鳴らすスマホをタップした。
{杉浦です。お疲れ様です}
「お疲れ様。目撃情報の収穫はあった?」
杉浦刑事と芳賀刑事は犯行現場となったJSホールディングス付近で犯人の目撃情報を集めていた。
{はい。JSホールディングスの夜間警備担当の警備員が木村隼人が襲われた時刻にJSホールディングスの非常階段から降りてくる男を見たと証言しています。それが……その……}
杉浦は口ごもり、数秒の沈黙の後に発言した。
{警備員は暗くてハッキリとは見えなかったが非常階段を降りて来た男は中年の背が高い男だったと言うんです。自分が所持していた佐藤瞬の手配写真を見せると、この男に似ていると証言しました}
「佐藤に似ていた? 確かな証言なの?」
{確証はありません。でも他に有力な証言は出ていません}
佐藤瞬が木村隼人を殺そうとした?
そんなことが起こり得るだろうか?
坂下菜々子の証言では隼人を襲った犯人の特徴は、声質が男子高校生のアニメキャラクターに似た若い男。身長も成人男性の平均的な高さ。
佐藤の身長は12年前の情報だが、推定で180㎝。現在の年齢は45歳で若い部類とは言えない。
警備員の証言は菜々子の証言と不自然なほどに正反対だ。
「杉浦さん、証言した警備員の身元を洗ってくれる?」
{警備員をですか?}
「念のため。警備員の素性は上には報告せずに私だけに知らせて。お願い」
仮に警備員の証言通り非常階段から中年の佐藤に似た男が降りて来たとしても、隼人を襲った犯人は佐藤ではない。
菜々子か警備員、どちらか嘘をついている。そうとしか思えなかった。