早河シリーズ完結編【魔術師】
自宅でしばしの仮眠を取った早河仁は昼過ぎに再度、雪の降る街に飛び出した。止まない雪が地面を白く覆い、道路に残る足跡やタイヤの跡は慣れない雪道に戸惑う都民の苦労の痕跡だ。
午前中には意識を取り戻した木村隼人の事情聴取が行われた。隼人の証言次第では、殺人未遂の容疑者から佐藤が除外されるだろう。
非常階段から降りてくる佐藤に似た人物を見たと話した警備員の証言は信憑性に欠ける。小山真紀も不審に思っていたが、暗がりの中で見知らぬ人間の顔を覚えているものだろうか?
警備員の素性は浜田と言う名の30代の男で前科はない。気になる経歴も見当たらなかったが、浜田が今月からJSホールディングスの夜間警備に配属された点は少々引っ掛かる。
早河は車のサイドミラーを見た。ミラーにバイクが映っている。自宅を出た辺りから、あのバイクに尾行されていた。
速度を上げたバイクが追い越し車線に出て早河の車と並列した。
早河は瞬時にハンドルを切って頭を伏せる。車がガードレールに激突するのと同時に、バイクの人物から放たれた銃弾が車の窓ガラスを突き破った。
凄まじい破裂音とガラスが飛び散る音に、近くのコンビニの店員が驚いて店内から顔を覗かせている。バイクの人物は速度を上げて走り去った。
『人の車めちゃくちゃにしやがって……』
飛び散ったガラス片に注意しつつ、助手席側の扉を開ける。コンビニの男性店員の手を借りて破損した車から避難した。
コンビニの軒下で早河は上野警視に一報を入れる。コンビニの店主がサービスでくれたホットの缶コーヒーを飲むと身体が温まった。
{撃たれた? 大丈夫か?}
『車はお陀仏《だぶつ》ですが、なんとか無事です。これで前と後ろに車がいたら玉突きになっていたかと思うとゾッとしますよ』
悪天候の気象が幸いしたのか、周囲に人がいなかったことで被害は最小限に食い止められた。
車は前のめりにガードレールに追突してボンネットが大破している。あの場で咄嗟に身を伏せなければ、横から頭を撃ち抜かれていた。
『ヘルメットを被っていて顔はわかりませんが体型から見て男。バイクのナンバーは記憶しています』
ナンバーから持ち主がわかる確率は低い。盗難品の可能性もあるからだ。
午前中には意識を取り戻した木村隼人の事情聴取が行われた。隼人の証言次第では、殺人未遂の容疑者から佐藤が除外されるだろう。
非常階段から降りてくる佐藤に似た人物を見たと話した警備員の証言は信憑性に欠ける。小山真紀も不審に思っていたが、暗がりの中で見知らぬ人間の顔を覚えているものだろうか?
警備員の素性は浜田と言う名の30代の男で前科はない。気になる経歴も見当たらなかったが、浜田が今月からJSホールディングスの夜間警備に配属された点は少々引っ掛かる。
早河は車のサイドミラーを見た。ミラーにバイクが映っている。自宅を出た辺りから、あのバイクに尾行されていた。
速度を上げたバイクが追い越し車線に出て早河の車と並列した。
早河は瞬時にハンドルを切って頭を伏せる。車がガードレールに激突するのと同時に、バイクの人物から放たれた銃弾が車の窓ガラスを突き破った。
凄まじい破裂音とガラスが飛び散る音に、近くのコンビニの店員が驚いて店内から顔を覗かせている。バイクの人物は速度を上げて走り去った。
『人の車めちゃくちゃにしやがって……』
飛び散ったガラス片に注意しつつ、助手席側の扉を開ける。コンビニの男性店員の手を借りて破損した車から避難した。
コンビニの軒下で早河は上野警視に一報を入れる。コンビニの店主がサービスでくれたホットの缶コーヒーを飲むと身体が温まった。
{撃たれた? 大丈夫か?}
『車はお陀仏《だぶつ》ですが、なんとか無事です。これで前と後ろに車がいたら玉突きになっていたかと思うとゾッとしますよ』
悪天候の気象が幸いしたのか、周囲に人がいなかったことで被害は最小限に食い止められた。
車は前のめりにガードレールに追突してボンネットが大破している。あの場で咄嗟に身を伏せなければ、横から頭を撃ち抜かれていた。
『ヘルメットを被っていて顔はわかりませんが体型から見て男。バイクのナンバーは記憶しています』
ナンバーから持ち主がわかる確率は低い。盗難品の可能性もあるからだ。