別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
 怒鳴り合う声がピタリとやむ。その場の視線が一斉にこちらに集まった。

「警察官は人に寄り添う仕事だという、あたりまえのことを忘れるな。ここでは所属の課は関係ない。何のための捜査かもう一度考えてほしい。優秀な捜査員のあなた方ならできるはずだ」

 しんと静まり返った会議室で瞬はモニターに目を向けた。

「さあ、もう一度現状の確認から整理し直しましょうか、今回の事件は詐欺リストの存在が――」

 瞬が続けると、会議室の雰囲気が変わった気がした。


「悪かったねぇ、ウチの課員が熱くなっちゃって」

 捜査会議を終え会議室を後にした瞬は、後ろから声を掛けられる。

 瞬はチラリと視線をやったが止まらず足を進める。

「でもあれだけで一気に場の雰囲気を引き締めちゃうなんて、さすが人食い鮫だなぁ」

「忙しいんじゃないのか、波多野(はたの)警視正」
 
 わざとらしく階級で呼ぶと、彼は苦笑して横に並ぶ。

「まぁそう言わずに、たまには同期と情報交換したくてね」

 波多野尚史(なおふみ)、彼も瞬と同じくキャリア組の警視正で、現在捜査二課の課長を務めている。背は瞬より少し低いが、体つきはガッチリしており柔道では黒帯の持ち主だ。
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