本当の愛を知った御曹司ギタリストは歌姫を溺愛する

「なんだ？　誰だ？」

男は私から離れて玄関へ向かうとドアスコープを覗く。

「ん？　真っ暗で見えないな。何か頼んだかな」

そう言いながら鍵を開けるとドアを開けた。

「んな！？　な、なんでお前がここに！？」

男は焦ったような声をあげる。

「おい、ストーカー野郎。亜里沙を返せ」

え！？
なんと獅音が現れたかと思えば男に向かって聞いたこともない低く怒りに満ちた冷たい声が聞こえてきた。

な、なんで…

「お邪魔させていただくよ」

「ちょ、お、おい！」

抵抗する男を押し除け部屋へと入ってきた獅音は、部屋の壁に貼ってある私の写真を見るなり眉間にシワを寄せる。

「これは？」

地を這うような低く凍りつく声で男を見て壁を指差す。

「い、いや…、こ、これは…」

おどおどとする男。

そして私の足元に散らばった服やアタッシュケースに目を向けて男を更に睨む。