訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
永翔がパイロット研修のためロサンゼルスの航空会社に行くという噂を耳にした。
この会社はエアウイングと提携しており、交換留学といった形で永翔が選ばれたらしい。
「しかもロサンゼルスで結婚するらしいよ! 相手、誰だと思う?」
「誰なの?」
「RALを経営する六条財閥の令嬢だって!」
そんな噂話を聞いて、陽鞠は愕然とした。
RALと言えば国内でも大手の航空会社であり、それを経営する六条財閥を知らない者はいない。
「何でもこの留学に推薦したのがその令嬢だって」
「他社なのにどうして? やっぱり婚約者だから?」
その噂を聞いた日は、抜け殻のように仕事をした。自分らしくない凡ミスを連発してしまい、情けなくて仕方なかった。
呆然としながらロッカールームで着替えている時、永翔からのメッセージが入っていた。
「今日会える? 話があるんだ」
直感的に留学の話かな、と思った。ロサンゼルスに行って結婚するからもう会えない、そう言われるのだろう。
「……あれ?」
陽鞠の頬に涙が伝っていた。いつの間にか涙が溢れ出ていた。
本気になってはいけないとあれだけ自分に言い聞かせておきながら、彼に恋する気持ちは抑えられなかった。
自分なんか恋人になれるはずがないのに、それでもどこか期待してしまっていた。
だけど現実を突きつけられ、ロッカールームにしゃがみ込んで一人涙を流し続けた。