訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
散々泣いて泣き腫らし、陽鞠を別れを決断した。
別れを切り出される前に自分から言おうと思った。
泣き腫らした赤い目を隠すため、顔を洗った。一からメイクをし直してから永翔の待つバーへと向かう。
「陽鞠!」
笑顔で名前を呼ばれると、とくんと胸が高鳴ってしまう。でもそれも今日で終わりにするのだ。
「陽鞠に話があるんだ。もしかしたら噂が流れているかもしれないけど、」
「わかっています」
やっぱりこの話だ、と思った。
陽鞠は努めて笑顔を作った。
「永翔さん、私エアウイングを辞めるんです」
「え……? どういうこと?」
陽鞠は前もって考えていた台詞をつらつらと喋った。
「実は両親が研究職で昔から海外を飛び回っているんですけど、今オーストラリアにいるんです。最近年なのか体調が悪いらしくて、私もそっちへ行こうかと」
「体調が悪いのなら帰国される方がいいんじゃないか?」
「私が行くって言ったんです。ワーキングホリデーに興味があったし、この機会にやってみようと思って」
両親が研究職で今オーストラリアにいるというのは事実だが、体調を崩してなどいない。
カンガルーと一緒に写ったエアメールが届くくらいには元気だ。
「君はGSの仕事を誇りに思っていたのに、そんな」
「一度きりの人生だから、自分のやってみたいことに挑戦したいと思ったんです」