訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
永翔は納得がいかないという表情を隠さなかったが、陽鞠は強い気持ちを持って屈しなかった。
「そういうわけなので、お別れですね」
「陽鞠、聞いてくれ。俺は、」
「楽しかったです、ありがとうございました。オーストラリアで楽しく過ごします」
「……、連絡してはダメなのか?」
「困ります。向こうで素敵な人と巡り会う予定ですから」
最後はきちんと笑えていただろうか。
翌日、永翔はロサンゼルスへと旅立った。
きっと永翔にとっては片時だけ遊んだ女に過ぎない。そのうち綺麗さっぱり忘れ去るのだろうと思った。
ロサンゼルスで本命の婚約者と幸せに暮らすのだろう。これでいい、強がりでもそう自分に言い聞かせる。
陽鞠の日常は永翔に出会う前に戻るだけ、そう思っていたのだがそうはいかなかった。
妊娠していることがわかったのは、永翔が旅立ってからすぐ後のことだった。
更に突然主任に呼び出され、思いがけない話をされる。
「えっ……私にお見合い、ですか?」
「ええ、東北の名士で烙条様という方がいらっしゃるのだけど、この前うちを利用してくださった時に息子さんが水鏡さんをいたくお気に召したそうなの」
「烙条様なら覚えています」
珍しい名前だし、熱心に色々尋ねて来られたのを陽鞠が対応したのでよく覚えている。
一見気難しそうな人に見えたが、陽鞠の説明を真剣に聞いてくれて最後は「とてもわかりやすくて助かりました」と礼を述べて立ち去っていった。