訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
長男の烙条淪太郎は現在三十三歳。
東北で有名な烙条酒造の専務取締役だそうだ。
そんなすごい人とお見合いだなんて現実味が湧かなかった。
「……有難いお話ですけれど、お見合いはできません」
「烙条様は会うだけでも良いとおっしゃっていたのだけれど……」
「それなら、直接会ってお断りします」
淪太郎はわざわざ東北から出向いてきてくれた。
相変わらず気難しそうな仏頂面を浮かべていたが、陽鞠を見ると「時間を作ってくださってありがとうございます」と丁寧にお辞儀をしてくれた。
席に着くと、何を飲みますかと尋ねてくれた。
少し怖そうに見えるが、心根は優しい方なんだろうなと思った。
「こちらこそ、遠方からはるばるお越しくださりありがとうございます。ご足労いただき大変申し訳ございませんが、この度のお話はお断りさせていただきたく存じます」
「理由を伺ってもよろしいですか?」
淪太郎は真っ直ぐ陽鞠を見て尋ねた。
「……実は、今お腹に赤ちゃんがいます」
「!」
「私はこの子を一人で育てていくつもりです」
「……」
しばし考え込むような仕草をした後、淪太郎はこう言った。
「あなたを初めて見た時、直感で何かに惹かれました。自分でもこんなことは初めてで、何に惹かれるのかとあなたにあれこれ難題をぶつけてしまいました」
やたらと色々尋ねて来られたなぁと思っていたが、そんなことを思っていたのかと少し驚く。