冷徹ドクターは初恋相手を離さない
第4話
午後の予定は、十三時半に吉村さんの術前IC(インフォームドコンセント)がある。簡単に言うと術前に行う説明のことだ。
術前ICに同席させていただけることは学生的にも非常に勉強になる。
今回私が受け持つ患者さんたちは手術を控えていていろいろと大変な時期だ。そんな状況だというのに、看護実習に協力してもらえることに感謝の気持ちを忘れないで関わるようにしている。
「吉村さん、失礼します」
私は吉村さんの病室に入りながら声をかける。六人部屋の向かって左側の窓側が吉村さんのベッドだ。
今はこの部屋には吉村さんを含めて三人しかいないが、ほかの部屋は六人であることが多い。
カーテンで仕切られているものの、静かな空間だから普段の大きさの声で話せば会話の内容はほぼ筒抜けだろう。
「あ、葉山さん。どうも。お昼、しっかり休めた?」
「はい。しっかりご飯も食べて休ませていただきました! あ、イスに座ってもいいですか?」
看護学生の基本。
患者さんとお話する時はなるべく視線を同じ高さにする。そのためにさりげなくイスに座る。
「どうぞどうぞ。そうだ、看護師さんから聞いたんだけど、先生からの手術前の説明に葉山さんも一緒に聞いてくれるって」
「はい。もし吉村さんがよろしければなのですが……大丈夫でしょうか」
「もちろん! むしろ嬉しいわ」
吉村さんはにっこりと笑ってくれた。私が知らない間に患者さんに話を通しておいてくれるなんて。藤野さん、本当に親切な方だ……。
「ありがとうございます。それではご一緒させていただきますね」
吉村さんとの会話は穏やかに進んでいく。こうして話していると、私が上手く患者さんと話せているものだと錯覚してしまうけれど、それは違う。
患者さんが気を遣ってくれて、私が話しやすいと感じているのだ。受け持ち患者さんたちはどんな人でも未熟な私に対してあたたかく接してくれる。とても嬉しいことだけど、看護師さんたちのようにスマートな関わりがまだできていないのが悔しいと常々思う。
術前ICに同席させていただけることは学生的にも非常に勉強になる。
今回私が受け持つ患者さんたちは手術を控えていていろいろと大変な時期だ。そんな状況だというのに、看護実習に協力してもらえることに感謝の気持ちを忘れないで関わるようにしている。
「吉村さん、失礼します」
私は吉村さんの病室に入りながら声をかける。六人部屋の向かって左側の窓側が吉村さんのベッドだ。
今はこの部屋には吉村さんを含めて三人しかいないが、ほかの部屋は六人であることが多い。
カーテンで仕切られているものの、静かな空間だから普段の大きさの声で話せば会話の内容はほぼ筒抜けだろう。
「あ、葉山さん。どうも。お昼、しっかり休めた?」
「はい。しっかりご飯も食べて休ませていただきました! あ、イスに座ってもいいですか?」
看護学生の基本。
患者さんとお話する時はなるべく視線を同じ高さにする。そのためにさりげなくイスに座る。
「どうぞどうぞ。そうだ、看護師さんから聞いたんだけど、先生からの手術前の説明に葉山さんも一緒に聞いてくれるって」
「はい。もし吉村さんがよろしければなのですが……大丈夫でしょうか」
「もちろん! むしろ嬉しいわ」
吉村さんはにっこりと笑ってくれた。私が知らない間に患者さんに話を通しておいてくれるなんて。藤野さん、本当に親切な方だ……。
「ありがとうございます。それではご一緒させていただきますね」
吉村さんとの会話は穏やかに進んでいく。こうして話していると、私が上手く患者さんと話せているものだと錯覚してしまうけれど、それは違う。
患者さんが気を遣ってくれて、私が話しやすいと感じているのだ。受け持ち患者さんたちはどんな人でも未熟な私に対してあたたかく接してくれる。とても嬉しいことだけど、看護師さんたちのようにスマートな関わりがまだできていないのが悔しいと常々思う。