冷徹ドクターは初恋相手を離さない

第6話

 翌日。
 昨夜荒木先生に思い切って送信したメッセージへの返事はまだ返ってこないけれど、朝は来る。
 といっても、あの後は今日の手術に向けての勉強で忙しくて気が紛れていたので特に落ち込むことはない。むしろ、良かったとすら思っていたりする。
「おはようございまーす」
 私は自転車を運転しながら、救急車両の出入り口に立っている警備員さんに挨拶をして駐輪場に向かう。
 現在の時刻は七時十五分。
 集合時間の七時五十分には早いけれど、私服からユニフォームに着替え、更衣室に用意された六人分のパイプ椅子が用意された大きめのテーブルに座り、今日の予定の確認や残っている記録などをしていればすぐに集合時間になっている。
 それに、この病院の敷地が広く、駐輪場から更衣室までの移動を考慮すると自然とこの時間になるのだ。

「葉山さんおはようございます」
「おはよう~」
 着替え終わると次々とほかの部署で実習をしている同期の子たちが来た。
 彼女たちは二十一、二歳。しかし、しっかり挨拶ができるし、実習の時は助け合っていて、全員で乗り切るぞという団結力や絆を感じられる。
 一般的な大学の学生になったことはないからわからないけれど、看護学科の学生はこんな雰囲気なのだろうか。
「じゃあみんな今日も頑張ろ!」
 明るくてはつらつとしている、みんなの中心に立つような子がそう声をかけると、ほかの子達も口を揃えて『がんばろうね』と言い合って各々の部署へと向かった。
 この子たちとは年齢差があるから自らそういった輪に入ることはないけれど、その場にいてあたたかい気持ちになるし、元気な子たちを見ていると私もパワーを貰える。
 私は、いつもより緊張した状態で病棟に上がった。
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