冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「やっぱり確定だな……」
 四年前から付き合っている彼氏の裕太は、去年の秋あたりから浮気をしている様子。
 実習や勉強、アルバイトで忙しい期間は会えなかったり、連絡頻度が下がってしまったりしていた。それが原因で浮気しているのだと考えていた。
 しかし、私も裕太との関係をこれからも続けるかどうかは悩んでいたところではあった。そんな時に浮気なんてされたら、もうこの関係を終わりにしてしまおうと思うのは自然なことだろう。
「SNSにわざわざこんな写真上げて……私から別れ話をしてほしいってことなの?」
 私は裕太のアカウントに新着で投稿された知らない女性とのツーショット写真を見て、溜め息をつく。これまでの投稿も見るためにスクロールしていく。
「はぁ……」
 私と違って綺麗な人。
 明るい髪色でゆるふわな巻き髪が似合う美人さん。ぱっちりとした瞳を活かすような派手めなメイクもばっちり似合っている。それにボディラインが出やすいデザインのニットを着て、ミニスカートを穿いている。それに加えてロングブーツが似合う細長い脚。守ってあげたくなるような華奢な身体だ。
 私の今の状態と比べてしまうと、とても惨めな気持ちになる。
 私との写真は投稿したことなんてないのに、この女性との写真は既に十回は投稿されている。つまり、裕太から教えてもらわないまま少なくとも十回は彼女とふたりきりで会っているということだ。
「もう、潮時ね……」
 裕太とはなんとなく相性も価値観も合うと思っていたし、年齢的にもタイミング的にも『この人と結婚するのかな』なんて思っていた私がバカだった。
 私が忙しい時に寄り添ってくれることもなく、浮気もしていた。隠すつもりもない。最近はメッセージも未読無視ばかり。
 月曜日に送ったメッセージには未だに既読がつかない。もう一週間近く無視されていることになる。
 どうしてこうなったのかな……。
 今思えば、私の忙しさによるすれ違いなんかではなく、結婚について話をしたからだったかもしれない。
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