冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「私と裕太との間にはもう信頼なんてない。付き合っていったとしても辛いだけだから別れてほしいってことよ」
夏美さんの立ち位置も完全に私寄りに移動していて、裕太対私と直哉さん、夏美さんとなっていた。
「認めなよ裕太。あんたが悪いことしたんだから」
裕太にとどめを刺すように夏美さんがそう言うと、裕太はいきなり狂ったように叫びながら私を目掛けて拳を振り上げてくる。
(まずい、殴られる)
咄嗟にしゃがみこんで頭を両腕で守る防御体勢に入ろうとした。
「女のくせに生意気だーッ!」
もともとそこまで遠くはない距離にいた裕太が、助走をつけて大きく拳を振りかぶる。
その光景が視界に入った私は、反射的にぎゅっと目を瞑って全身に力が入っていた。
ドスン──
数秒後、鈍い音がしたので目を開けると、裕太は仰向けに倒れていた。
「えっ、あ、ええっ!? 裕太!?」
何が起こったの?
私が何が起こったのか把握しようとあたりを見渡すと、目を見開いて口をぽかんと開けていた夏美さんが腕組みをしたままの直哉さんを凝視していた。
「す、すご……」
「一体何が」
「いや、うーんと……背負い投げ、かな」
「え?」
背負い投げ? 誰が? 誰に?
突然の出来事に驚きすぎて、情報処理が追い付かない。
でも、どう考えても目の前にいる直哉さんが裕太を背負い投げしたとしか言えない状況に、思わず口を両手で隠してしまう。
「手荒な真似をしてすまない。ただ、詩織が危ないと思ったのであくまで正当防衛だと思う。うん、打ちどころも悪くないし問題ない」
直哉さんは狙って芝生の上に着地できるように背負い投げをしたのだろうか。その後は丁寧に脈や呼吸、外傷の有無を確認していた。
「……くっ、くそ。なんだてめぇ」
「意識も問題なし。頭も打っていないしそのまま家に帰っていいだろう」
直哉さんは膝をついて裕太の肩を抱いて座らせると、裕太は不機嫌そうな顔をしながらも素直に起こされる。
夏美さんの立ち位置も完全に私寄りに移動していて、裕太対私と直哉さん、夏美さんとなっていた。
「認めなよ裕太。あんたが悪いことしたんだから」
裕太にとどめを刺すように夏美さんがそう言うと、裕太はいきなり狂ったように叫びながら私を目掛けて拳を振り上げてくる。
(まずい、殴られる)
咄嗟にしゃがみこんで頭を両腕で守る防御体勢に入ろうとした。
「女のくせに生意気だーッ!」
もともとそこまで遠くはない距離にいた裕太が、助走をつけて大きく拳を振りかぶる。
その光景が視界に入った私は、反射的にぎゅっと目を瞑って全身に力が入っていた。
ドスン──
数秒後、鈍い音がしたので目を開けると、裕太は仰向けに倒れていた。
「えっ、あ、ええっ!? 裕太!?」
何が起こったの?
私が何が起こったのか把握しようとあたりを見渡すと、目を見開いて口をぽかんと開けていた夏美さんが腕組みをしたままの直哉さんを凝視していた。
「す、すご……」
「一体何が」
「いや、うーんと……背負い投げ、かな」
「え?」
背負い投げ? 誰が? 誰に?
突然の出来事に驚きすぎて、情報処理が追い付かない。
でも、どう考えても目の前にいる直哉さんが裕太を背負い投げしたとしか言えない状況に、思わず口を両手で隠してしまう。
「手荒な真似をしてすまない。ただ、詩織が危ないと思ったのであくまで正当防衛だと思う。うん、打ちどころも悪くないし問題ない」
直哉さんは狙って芝生の上に着地できるように背負い投げをしたのだろうか。その後は丁寧に脈や呼吸、外傷の有無を確認していた。
「……くっ、くそ。なんだてめぇ」
「意識も問題なし。頭も打っていないしそのまま家に帰っていいだろう」
直哉さんは膝をついて裕太の肩を抱いて座らせると、裕太は不機嫌そうな顔をしながらも素直に起こされる。