冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「続きはまた今度」
直哉さんは目を細めて人差し指を立てて私の唇に当てて、妖しく笑った。
「は、はいっ……!」
直哉さんが『家まで送るよ』と言って立ち上がったので、私も立つと直哉さんは自然に手を繋いでくれる。そんなことがこれからは『当たり前』になっていくのかと思うと、口元が緩んでしまう。
駅までの帰り道は何も話さなかったけれど、隣に彼がいてくれるだけで幸せだ。
愛する人と一緒に帰るということが、こんなにも楽しいだなんて知らなかった。私に愛を教えてくれた直哉さんをこれからも大切にしたい。私はそう強く思った。
「それじゃあ。近いうちにまた会おう」
「はい。もちろんです」
電車から降りて、十分程度歩いていたはずなのに体感時間は半分以下だ。あっという間に私の住むアパートに着いてしまって、直哉さんと別れる。
「ただいま~」
私は部屋の電気を点けて手洗いうがいをしてからソファに深く座った。しばらく今日の出来事が夢のような気がして、余韻に浸っていた。
「直哉さんと私が恋人……」
これからの私がどうなっていくのかなんて誰にもわからない。しかし、今後しばらくはどんなにつらいことがあっても、愛する人がいてくれるだけで乗り越えられるはずだ。
こんなにも希望に満ちた明日を思い描けるだなんて、これまでの私に想像できただろうか。
もしこのまま交際を続けた場合の未来の姿を想像して、私はつい浮かれた気持ちになってクッションに顔を埋める。
「でも……」
今日の私は少しだけ自信に満ちていた。しかし、その自信はすぐに崩れてしまう。
まだ私は愛する人に『愛している』と言葉にすることができない。その言葉を紡ぐのが怖い。
直哉さんは私に対して真っ直ぐ想いを伝えてくれたというのに、私は返すことができなかった。そんな自分を直哉さんは好きでいてくれるのだろうか。
私は、このまま直哉さんの隣にいてもいいのだろうか。
直哉さんのことは好き。好き合っているのだとわかっている。
でも、いつか終わりがきてしまうかもしれない。自信のない私に愛想を尽かすかもしれない。飽きられてしまうかもしれない。
そういった不安が募ってしまう。
そんな未来、絶対に嫌だ。ならば、変わるしかない。いつまでも自分の思いに蓋をして、口を塞いでいてはいけない。
私は固く決意をしたのであった。
直哉さんは目を細めて人差し指を立てて私の唇に当てて、妖しく笑った。
「は、はいっ……!」
直哉さんが『家まで送るよ』と言って立ち上がったので、私も立つと直哉さんは自然に手を繋いでくれる。そんなことがこれからは『当たり前』になっていくのかと思うと、口元が緩んでしまう。
駅までの帰り道は何も話さなかったけれど、隣に彼がいてくれるだけで幸せだ。
愛する人と一緒に帰るということが、こんなにも楽しいだなんて知らなかった。私に愛を教えてくれた直哉さんをこれからも大切にしたい。私はそう強く思った。
「それじゃあ。近いうちにまた会おう」
「はい。もちろんです」
電車から降りて、十分程度歩いていたはずなのに体感時間は半分以下だ。あっという間に私の住むアパートに着いてしまって、直哉さんと別れる。
「ただいま~」
私は部屋の電気を点けて手洗いうがいをしてからソファに深く座った。しばらく今日の出来事が夢のような気がして、余韻に浸っていた。
「直哉さんと私が恋人……」
これからの私がどうなっていくのかなんて誰にもわからない。しかし、今後しばらくはどんなにつらいことがあっても、愛する人がいてくれるだけで乗り越えられるはずだ。
こんなにも希望に満ちた明日を思い描けるだなんて、これまでの私に想像できただろうか。
もしこのまま交際を続けた場合の未来の姿を想像して、私はつい浮かれた気持ちになってクッションに顔を埋める。
「でも……」
今日の私は少しだけ自信に満ちていた。しかし、その自信はすぐに崩れてしまう。
まだ私は愛する人に『愛している』と言葉にすることができない。その言葉を紡ぐのが怖い。
直哉さんは私に対して真っ直ぐ想いを伝えてくれたというのに、私は返すことができなかった。そんな自分を直哉さんは好きでいてくれるのだろうか。
私は、このまま直哉さんの隣にいてもいいのだろうか。
直哉さんのことは好き。好き合っているのだとわかっている。
でも、いつか終わりがきてしまうかもしれない。自信のない私に愛想を尽かすかもしれない。飽きられてしまうかもしれない。
そういった不安が募ってしまう。
そんな未来、絶対に嫌だ。ならば、変わるしかない。いつまでも自分の思いに蓋をして、口を塞いでいてはいけない。
私は固く決意をしたのであった。