冷徹ドクターは初恋相手を離さない
第10話
高速道路から降りて三十分程度走ると、目的地に到着した。
まずはお寺でお墓参りをする。山の麓にあるこのお寺は地域でも有名なお寺で、昨今の状況や地域で墓じまいする人々の声も反映させながら、永代供養墓を始めたという。
時刻は十四時。車から降りると、夏の暑さを感じさせない木陰に入り、心地好さを感じる。お盆の時期には一足早く来た私たちのほかにはお墓参りに来ている人はいない。
お寺の敷地には綺麗に整えられたお墓が並び、その奥に永代供養の墓が並んでいて、そこに母が眠っている。
「久しぶり、お母さん」
ロッカーのように並ぶ個別安置墓の一番左の最上段が母のお墓だ。合同のお墓でも仏花を供えられるようになっており、その花の管理もお寺がやってくれる。私はお寺に向かう途中で買った白い菊を供えた。
そして、線香に火を点けて手で仰ぐようにして消し、香炉に置いて手を合わせ目を閉じる。私の後に直哉さんも続けて同じ手順で線香を供えて手を合わせた。
(今年は私の大切な人を連れて来たよ。お母さんに紹介したかったんだ)
私が一通り心の中で母に語りかけて、一歩後ろにいた直哉さんの方を振り返ると、まだ手を合わせていた。その様子を見ていると、数秒後に私の気配を感じたのか目を開けて私に微笑む。
「長かったですね」
私は直哉さんが何を母に伝えていたのか、はたまた無心で手を合わせていたのかはわからない。しかし、その内容を探ることはしない。ただ、私の亡き母にも真摯な態度をしてくれている姿を見て、母も直哉さんのことを気に入ってくれているのではないかなと思ったのだ。
まずはお寺でお墓参りをする。山の麓にあるこのお寺は地域でも有名なお寺で、昨今の状況や地域で墓じまいする人々の声も反映させながら、永代供養墓を始めたという。
時刻は十四時。車から降りると、夏の暑さを感じさせない木陰に入り、心地好さを感じる。お盆の時期には一足早く来た私たちのほかにはお墓参りに来ている人はいない。
お寺の敷地には綺麗に整えられたお墓が並び、その奥に永代供養の墓が並んでいて、そこに母が眠っている。
「久しぶり、お母さん」
ロッカーのように並ぶ個別安置墓の一番左の最上段が母のお墓だ。合同のお墓でも仏花を供えられるようになっており、その花の管理もお寺がやってくれる。私はお寺に向かう途中で買った白い菊を供えた。
そして、線香に火を点けて手で仰ぐようにして消し、香炉に置いて手を合わせ目を閉じる。私の後に直哉さんも続けて同じ手順で線香を供えて手を合わせた。
(今年は私の大切な人を連れて来たよ。お母さんに紹介したかったんだ)
私が一通り心の中で母に語りかけて、一歩後ろにいた直哉さんの方を振り返ると、まだ手を合わせていた。その様子を見ていると、数秒後に私の気配を感じたのか目を開けて私に微笑む。
「長かったですね」
私は直哉さんが何を母に伝えていたのか、はたまた無心で手を合わせていたのかはわからない。しかし、その内容を探ることはしない。ただ、私の亡き母にも真摯な態度をしてくれている姿を見て、母も直哉さんのことを気に入ってくれているのではないかなと思ったのだ。