冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「それでは時間になりましたので、講演の方を始めさせていただきます。本日はお集まりいただきありがとうございます。世愛総合病院がん相談支援センターの笹原と申します。本日は乳腺外科の医師である荒木直哉先生から乳がんについてのお話をしていただきます。また、その後は私の方から簡単にがん相談支援センターの役割や相談内容などのご説明をさせていただきます。それでは、まず初めに荒木先生よろしくお願いします」
「はい」
直哉さんがマイクを持ち、演台の前に立つと早速プロジェクターに一枚目の資料が映し出された。
「いきなりですが、みなさんの乳がん知識を簡単に確認させてください。乳がんは女性のがん患者の中で何番目に多いと多いと思いますか?……恐らく身近ながんと言えば大腸がん、胃がん、肺がんが挙がるかと思いますが──」
乳がんが女性の部位別がん罹患数では最も多いことや、二十代後半から増加してきて四十代後半から急増することから、妊娠を考える時期や子育てをしている時期と被っていることなどを資料を用いながら説明していく。
その後は、もし乳がんかも? と思ったら乳腺科や乳腺外科を受診すること、セルフチェックの方法をパンフレットを配布し、それを参考にしながら説明し、触診モデルに触れて実際にどんな触感なのかを教えていた。
(直哉さん、難しい言葉を使わないし女性の思いに寄り添おうとしているのが伝わる。何より、プライベートゾーンのがんだから自分で気にかけてチェックすることが大切だということも納得感がある)
私も就職後、乳がん患者さんと関わることがあるだろうからこの講演に参加出来て良かった。メモを取りながら直哉さんが話を聞く。その後の笹原さんのがん相談支援センターのお話もしっかりと聞いて、学ばせてもらった。
「それでは今回の講演は以上になります。みなさま本日はご参加いただきありがとうございました。ぜひ、今日の講演をご友人やご家族にも伝えてください。早期発見が大切です」
あっという間に講演が終わり、参加者が退室するのを見送る。
予定していた時間よりも十分ほど早く終わった講演。これはこの後のランチを意識して直哉さんの枠で調整されたことなのか、たまたまなのかはわからない。
「葉山さん今日はありがとうねぇ、助かったよ」
「いえいえそんな! 私こそ貴重な体験になりました。お誘いいただきありがとうございました」
「また何かあったら声かけるかもだから、その時はどうぞよろしくね」
「はい、こちらこそ」
笹原さんは片付けながら話しかけてくれる。それに答えながらも私は手を休めることなく片付けを同時に行う。直哉さんがスマホを見た後、『すみません、呼び出しがあったので先に失礼します。片付け、任せてしまって申し訳ないです』と言い残して電話をかけながら外に出ていった。
急いで出ていく様子を確認してからも、私は残りのイスやテーブルを淡々と片付けていく。すると、あと少しで畳み終わるところで笹原さんもテーブルを畳むのを手伝ってくれた。
「手伝うよ」
「あっ、ありがとうございます」
「はい」
直哉さんがマイクを持ち、演台の前に立つと早速プロジェクターに一枚目の資料が映し出された。
「いきなりですが、みなさんの乳がん知識を簡単に確認させてください。乳がんは女性のがん患者の中で何番目に多いと多いと思いますか?……恐らく身近ながんと言えば大腸がん、胃がん、肺がんが挙がるかと思いますが──」
乳がんが女性の部位別がん罹患数では最も多いことや、二十代後半から増加してきて四十代後半から急増することから、妊娠を考える時期や子育てをしている時期と被っていることなどを資料を用いながら説明していく。
その後は、もし乳がんかも? と思ったら乳腺科や乳腺外科を受診すること、セルフチェックの方法をパンフレットを配布し、それを参考にしながら説明し、触診モデルに触れて実際にどんな触感なのかを教えていた。
(直哉さん、難しい言葉を使わないし女性の思いに寄り添おうとしているのが伝わる。何より、プライベートゾーンのがんだから自分で気にかけてチェックすることが大切だということも納得感がある)
私も就職後、乳がん患者さんと関わることがあるだろうからこの講演に参加出来て良かった。メモを取りながら直哉さんが話を聞く。その後の笹原さんのがん相談支援センターのお話もしっかりと聞いて、学ばせてもらった。
「それでは今回の講演は以上になります。みなさま本日はご参加いただきありがとうございました。ぜひ、今日の講演をご友人やご家族にも伝えてください。早期発見が大切です」
あっという間に講演が終わり、参加者が退室するのを見送る。
予定していた時間よりも十分ほど早く終わった講演。これはこの後のランチを意識して直哉さんの枠で調整されたことなのか、たまたまなのかはわからない。
「葉山さん今日はありがとうねぇ、助かったよ」
「いえいえそんな! 私こそ貴重な体験になりました。お誘いいただきありがとうございました」
「また何かあったら声かけるかもだから、その時はどうぞよろしくね」
「はい、こちらこそ」
笹原さんは片付けながら話しかけてくれる。それに答えながらも私は手を休めることなく片付けを同時に行う。直哉さんがスマホを見た後、『すみません、呼び出しがあったので先に失礼します。片付け、任せてしまって申し訳ないです』と言い残して電話をかけながら外に出ていった。
急いで出ていく様子を確認してからも、私は残りのイスやテーブルを淡々と片付けていく。すると、あと少しで畳み終わるところで笹原さんもテーブルを畳むのを手伝ってくれた。
「手伝うよ」
「あっ、ありがとうございます」