冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「詩織! 今代わる」
唐突に聞えてきた自分の名前を呼ぶ声。
私はその声と姿が隣に現れた時、心底安心した。
「直哉さん……!」
「いち、にっ、さんっ!」
まるでヒーローのような登場だった。
速やかに交代してやっと休めた。心臓が身体中に酸素を送り届けようと大きく拍動している。口の中は血の味がした。
「遅くなった、よくひとりで頑張った」
「い、いえ……私は……」
そんなことを言われてしまったら、泣いてしまうよ。
直哉さんが必死に胸骨圧迫を行い、誰かの命を救おうとする懸命な姿に心を打たれる。
「誰か心臓マッサージできる人、いませんか! あと二人はほしい」
直哉さんが大きな声で問いかけると、手を挙げた男子高校生の二人組が出てくれた。偶然ここを通りがかった子たちなのだろうか。
「よし、じゃああと1セットやったら交替してくれるか」
直哉さんのリーダーシップにより男子高校生二人にも引き継がれ、なんとか助かった。
それからは直哉さんと高校生の二人が代わる代わる胸骨圧迫をして、しばらくすると救急車が到着して無事に引き継がれて病院に搬送された。
その様子を見届けると集まっていた人たちが次々と解散していき、私たちだけがぽつんと残っている。
「はあ、どうなることかと思いましたよ」
私は近くに置いていたフラペチーノをごくごくと飲んで、『ぷはーっ!』とまるで仕事終わりにお酒を飲んだ一口目のような反応をしてしまう。
「お疲れ。あと、待たせてごめん」
直哉さんがそう言うと、私の手を握ってくれた。
「詩織が助けたんだよ、あの人を」
「私が……助けたんですかね」
「ああ。もしかしたらあの場に、できるけど出たくない人もいたかもしれない。そんな中、詩織は自分がやらなきゃと思ってやったんだろ?」
「はい」
「それなら、詩織のおかげだろう。もっと自信を持てばいい」
直哉さんが私の頭をぽんぽんとしてくれる。
なんだか子どもを褒めるみたいな褒め方だけれども、私にとって直哉さんの大きな手で頭を撫でられるのは嬉しい。
もっと自信を持っていいんだ。私。
「ありがとうございます」
「うん。それでいい。……ところで、あんたはいつまでここにいるの」
直哉さんがそう言った方を見ると、裕太が突っ立ったまま私のことを凝視している。
唐突に聞えてきた自分の名前を呼ぶ声。
私はその声と姿が隣に現れた時、心底安心した。
「直哉さん……!」
「いち、にっ、さんっ!」
まるでヒーローのような登場だった。
速やかに交代してやっと休めた。心臓が身体中に酸素を送り届けようと大きく拍動している。口の中は血の味がした。
「遅くなった、よくひとりで頑張った」
「い、いえ……私は……」
そんなことを言われてしまったら、泣いてしまうよ。
直哉さんが必死に胸骨圧迫を行い、誰かの命を救おうとする懸命な姿に心を打たれる。
「誰か心臓マッサージできる人、いませんか! あと二人はほしい」
直哉さんが大きな声で問いかけると、手を挙げた男子高校生の二人組が出てくれた。偶然ここを通りがかった子たちなのだろうか。
「よし、じゃああと1セットやったら交替してくれるか」
直哉さんのリーダーシップにより男子高校生二人にも引き継がれ、なんとか助かった。
それからは直哉さんと高校生の二人が代わる代わる胸骨圧迫をして、しばらくすると救急車が到着して無事に引き継がれて病院に搬送された。
その様子を見届けると集まっていた人たちが次々と解散していき、私たちだけがぽつんと残っている。
「はあ、どうなることかと思いましたよ」
私は近くに置いていたフラペチーノをごくごくと飲んで、『ぷはーっ!』とまるで仕事終わりにお酒を飲んだ一口目のような反応をしてしまう。
「お疲れ。あと、待たせてごめん」
直哉さんがそう言うと、私の手を握ってくれた。
「詩織が助けたんだよ、あの人を」
「私が……助けたんですかね」
「ああ。もしかしたらあの場に、できるけど出たくない人もいたかもしれない。そんな中、詩織は自分がやらなきゃと思ってやったんだろ?」
「はい」
「それなら、詩織のおかげだろう。もっと自信を持てばいい」
直哉さんが私の頭をぽんぽんとしてくれる。
なんだか子どもを褒めるみたいな褒め方だけれども、私にとって直哉さんの大きな手で頭を撫でられるのは嬉しい。
もっと自信を持っていいんだ。私。
「ありがとうございます」
「うん。それでいい。……ところで、あんたはいつまでここにいるの」
直哉さんがそう言った方を見ると、裕太が突っ立ったまま私のことを凝視している。