冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「詩織、変わったな。別れてからも何回か偶然会ったけど、どんどん素敵になっていく。俺、後悔していて……こんなかっこいい人が奥さんだったらいいのにって。俺、詩織と結婚したい……今そう思ったんだ」
そんな風に打ち明けられても私はまったく揺らがない。それどころか、直哉さんのおかげで変わった私を知って結婚したいだなんて自分勝手にもほどがある。
しかし、昔の私なら裕太がそんなことを言ってくれたら喜んで浮気のことや結婚に関する話でのいざこざも水に流していたかもしれない。でも、今の私は違う。
心に決めた人はひとりだけだ。
「で? あんたは私を諦めきれないから復縁しろって? そんな都合のいいことないでしょ。もう終わった関係なのよ私たち。それに私は直哉さんとお付き合いしているし直哉さんを愛しているから。結婚するなら裕太じゃない。直哉さんとよ」
ハイになっていたのだろうか。
私は何か恥ずかしいことを言い放った気がする。
「そうか……そうだな。なんだかスッキリした。ありがとう、詩織。お幸せに」
裕太は以前のような粘着質な言動はせず、立ち去っていった。
その背中を見送ると、なんだか寂しい気もしてきたが、それはきっと昔の自分とのお別れの象徴だからだろうと思うことにした。
そして裕太が見えなくなって一段落すると、さっき自分で言ったことが脳内で繰り返し再生されてしまう。発言を振り返ると、隣で私たちのやりとりを見ていた直哉さんと目を合わせるのが気まずくて、フラペチーノを飲みながら直哉さんとは目を合わせずに立ち上がる。
「さ、さぁ直哉さん! 遅くなってしまいましたがランチ、行きましょう!?」
何か突っこまれる前に話題を出してこの場から移動してしまおうとした瞬間。
直哉さんが腰を抱き寄せ、身体を密着させてぎゅっと抱きしめてきた。
「な、直哉さん!? ここ、外……」
「すまん。つい」
「もう……」
私は飲み終わったフラペチーノの容器を両手で強く握ってしまう。
「俺と結婚したいって思ってくれてたのか?」
「あれはつい口走ってしまったといいますか……」
「嬉しかったんだ。詩織も俺と同じ気持ちだったんだってわかって」
直哉さんは私の耳元で低く囁く。
耳の奥まで届くこの低音に私はめっぽう弱い。下腹部がきゅんと疼いてしまう。
旅館で丁寧に抱かれてから私の身体はすっかり直哉さんの声に反応してしまうようになってしまったのだ。
じんわりと熱を帯びてくる下腹部を抑えるのに必死である。
「この話はあとでゆっくりしよう」
「はい、そうですね……」
そう言うと直哉さんは私を解放してくれた。
私はその腕に名残惜しさを感じてしまい、ふと後ろに振り返る。
「ランチの約束していたのに申し訳ないが、これから俺の家に行かないか」
「えっ、直哉さんのおうちですか? いいですけれど急にどうしたんですか」
私は唐突の予定の変更に何か理由があるのかと疑問に思い、直哉さんに聞いてしまった。
正直この後のことを期待してしまっている自分がいるが、それを悟られないように装って聞いている。
「今すぐ抱きたい……」
直哉さんに耳打ちされたその言葉に私は顔を真っ赤にする。
ぶわっと火が噴き出るかのように急激に上昇する体温と心拍数。身体が火照ってきて、とくんとくん、と甘くおなかの奥が脈打つ。
こんなに直哉さんと肌を重ねることに期待してしまう身体に変えられてしまっていたなんて、今まで気づかなかった……。
「ちょ、そ、そんなっ、わたし心の準備が」
「イエスかノーか」
「……イエス……で」
私が恥ずかしさで消えてしまいそうな声で返事をすると直哉さんは指を絡めて手を繋いできた。
フラペチーノの容器をごみ箱に捨てて、私たちは直哉さんのおうちに向かう。
直哉さんのおうちに着いてからは、ごはんを食べるのも忘れてしまうほどお互いを熱く求め合った。
彼から愛される喜びと心地好さから逃げることはできない。
大きすぎる愛に戸惑いながらそれを一身に受けて、快楽に溺れていく。
私はすっかり、直哉さんから注がれる愛の拒み方を忘れてしまったのである──
そんな風に打ち明けられても私はまったく揺らがない。それどころか、直哉さんのおかげで変わった私を知って結婚したいだなんて自分勝手にもほどがある。
しかし、昔の私なら裕太がそんなことを言ってくれたら喜んで浮気のことや結婚に関する話でのいざこざも水に流していたかもしれない。でも、今の私は違う。
心に決めた人はひとりだけだ。
「で? あんたは私を諦めきれないから復縁しろって? そんな都合のいいことないでしょ。もう終わった関係なのよ私たち。それに私は直哉さんとお付き合いしているし直哉さんを愛しているから。結婚するなら裕太じゃない。直哉さんとよ」
ハイになっていたのだろうか。
私は何か恥ずかしいことを言い放った気がする。
「そうか……そうだな。なんだかスッキリした。ありがとう、詩織。お幸せに」
裕太は以前のような粘着質な言動はせず、立ち去っていった。
その背中を見送ると、なんだか寂しい気もしてきたが、それはきっと昔の自分とのお別れの象徴だからだろうと思うことにした。
そして裕太が見えなくなって一段落すると、さっき自分で言ったことが脳内で繰り返し再生されてしまう。発言を振り返ると、隣で私たちのやりとりを見ていた直哉さんと目を合わせるのが気まずくて、フラペチーノを飲みながら直哉さんとは目を合わせずに立ち上がる。
「さ、さぁ直哉さん! 遅くなってしまいましたがランチ、行きましょう!?」
何か突っこまれる前に話題を出してこの場から移動してしまおうとした瞬間。
直哉さんが腰を抱き寄せ、身体を密着させてぎゅっと抱きしめてきた。
「な、直哉さん!? ここ、外……」
「すまん。つい」
「もう……」
私は飲み終わったフラペチーノの容器を両手で強く握ってしまう。
「俺と結婚したいって思ってくれてたのか?」
「あれはつい口走ってしまったといいますか……」
「嬉しかったんだ。詩織も俺と同じ気持ちだったんだってわかって」
直哉さんは私の耳元で低く囁く。
耳の奥まで届くこの低音に私はめっぽう弱い。下腹部がきゅんと疼いてしまう。
旅館で丁寧に抱かれてから私の身体はすっかり直哉さんの声に反応してしまうようになってしまったのだ。
じんわりと熱を帯びてくる下腹部を抑えるのに必死である。
「この話はあとでゆっくりしよう」
「はい、そうですね……」
そう言うと直哉さんは私を解放してくれた。
私はその腕に名残惜しさを感じてしまい、ふと後ろに振り返る。
「ランチの約束していたのに申し訳ないが、これから俺の家に行かないか」
「えっ、直哉さんのおうちですか? いいですけれど急にどうしたんですか」
私は唐突の予定の変更に何か理由があるのかと疑問に思い、直哉さんに聞いてしまった。
正直この後のことを期待してしまっている自分がいるが、それを悟られないように装って聞いている。
「今すぐ抱きたい……」
直哉さんに耳打ちされたその言葉に私は顔を真っ赤にする。
ぶわっと火が噴き出るかのように急激に上昇する体温と心拍数。身体が火照ってきて、とくんとくん、と甘くおなかの奥が脈打つ。
こんなに直哉さんと肌を重ねることに期待してしまう身体に変えられてしまっていたなんて、今まで気づかなかった……。
「ちょ、そ、そんなっ、わたし心の準備が」
「イエスかノーか」
「……イエス……で」
私が恥ずかしさで消えてしまいそうな声で返事をすると直哉さんは指を絡めて手を繋いできた。
フラペチーノの容器をごみ箱に捨てて、私たちは直哉さんのおうちに向かう。
直哉さんのおうちに着いてからは、ごはんを食べるのも忘れてしまうほどお互いを熱く求め合った。
彼から愛される喜びと心地好さから逃げることはできない。
大きすぎる愛に戸惑いながらそれを一身に受けて、快楽に溺れていく。
私はすっかり、直哉さんから注がれる愛の拒み方を忘れてしまったのである──