冷徹ドクターは初恋相手を離さない
「我が家に帰るのが楽しみだな」
「はい、そうですね」
「ママ」
「はい?」
 唐突にママと呼ばれると、なんだか照れくさくなってしまう。
 はい、と返事はしたものの、呼ばれ慣れないその肩書をしっかりと受け入れようと思った。
「はるとの漢字、やっぱりこれがいいよな」
「そうですね、私もこれがいちばん気に入っています」
 直哉さんがスマホで見せてくれたのは、『陽斗』と半紙に筆で書かれた写真だった。
 きっと、直哉さんが密かに書いていたものだろうか。お世辞にもあまり上手とは言えないその字を見て、ふふ、と笑ってしまう。
「何か?」
「あー、いえ。これ直哉さんが書いたんですか?」
「そうだけど」
「ふふ、やっぱり。なんか直哉さんの字っぽいなと思ったら面白くてつい」
「よくわからんが、笑ってくれるならいいか」


 この先に明るい未来が待っている。
 人生は長い旅路だ。
 つらく苦しいこともあるだろう。その分、幸せなことも必ずあるだろう。
 私は絶対にこの幸せを離さない。どんなことがあろうとも。
 三人でどんな道も歩み続けていく。それが私の人生だ。
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