向日葵の園
「こいつらの種は、来年にはきっときれいに咲くよ。その養分にきみがなってあげるんだ」

「わたし…」

「言っただろ。確信したって。何度打ち砕かれても立ち向かうきみの強さ。最終兵器のシンボルだってね。きみに出逢えて本当によかった。ようやく完成するよ。俺の理想の、希望の園がね」

憂さんがスッと手のひらを私に差し出す。
何かを渡せと言っているような手つきだった。

「何…」

「薬。持ったままでしょ」

あぁ…、と思い当たって、
ポケットに入れたままだった注射器を取り出す。

冷たい。

まだ感じる温度。

私の手から受け取ったソレを
憂さんは踏みつけて粉々に砕いた。

オレンジ色の液体がコンクリートの床にシミを作る。

「なんで」

「きみに必要なのはこんな物じゃないからね」

憂さんは病院の診察室で、
治療に使う器具を乗せているキャスター付きの小さい銀色のラックみたいなところから一本の注射器を持ってきた。

紫になりきれない、途中みたいな深い青。
人差し指と親指でカツンって弾いて、中の液体を揺らす。

早く立ち上がれって、脳が警鐘を鳴らす。
心臓が弾け飛びそうなくらい鼓動している。

なのに全然ダメだ。
体の力が抜けてしまって、もう立ち上がることも…。

「いよいよだね。緊張するよ」

武者震いみたいにブルッと肩を震わせた憂さんが一歩、また一歩…。
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