向日葵の園
グッと強く押したボタン。
ゴウンッ、と大きく音を立てて振動する銀色の鉄の箱。
一分も、二分も経っていないと思う。
すぐに停止した箱のハンドルを憂さんがもう一度回す。
二人分の体でぎゅうぎゅうだったはずの中身は
質量を十分の一くらいに減らしている。
二人の体はどこにもない。
都の中にまだ残っていた血液がどす黒くこびり付いた鉄の壁と、
数えきれないくらいの大量の向日葵の種。
種に埋もれるようにして僅かに散乱する髪の毛、骨の破片、皮膚の一部。
蹲って、嘔吐。
今朝から何も食べていない私の胃からは
ほとんど胃液しか出てこなかった。
「人間の手で収穫するのは大変だからね。こうするのが早いんだ」
種になってしまった。
咲き誇る花にもなれなかった。
種に。
「種は素晴らしいよ。ここから新しい命が芽生えていくんだから。それにこんなに沢山のね」
「鬼…鬼…あんたなんか…」
「他人の消失に悲しんでる場合じゃないよ、ヒマワリちゃん」
「え…」
ピタリと体を寄せて、私を見下ろす憂さんの醒めた目と、上がる口角。
催眠術をかけられてしまったみたいに、体を動かせない。
ゴウンッ、と大きく音を立てて振動する銀色の鉄の箱。
一分も、二分も経っていないと思う。
すぐに停止した箱のハンドルを憂さんがもう一度回す。
二人分の体でぎゅうぎゅうだったはずの中身は
質量を十分の一くらいに減らしている。
二人の体はどこにもない。
都の中にまだ残っていた血液がどす黒くこびり付いた鉄の壁と、
数えきれないくらいの大量の向日葵の種。
種に埋もれるようにして僅かに散乱する髪の毛、骨の破片、皮膚の一部。
蹲って、嘔吐。
今朝から何も食べていない私の胃からは
ほとんど胃液しか出てこなかった。
「人間の手で収穫するのは大変だからね。こうするのが早いんだ」
種になってしまった。
咲き誇る花にもなれなかった。
種に。
「種は素晴らしいよ。ここから新しい命が芽生えていくんだから。それにこんなに沢山のね」
「鬼…鬼…あんたなんか…」
「他人の消失に悲しんでる場合じゃないよ、ヒマワリちゃん」
「え…」
ピタリと体を寄せて、私を見下ろす憂さんの醒めた目と、上がる口角。
催眠術をかけられてしまったみたいに、体を動かせない。