向日葵の園
「この旅行が終わったらすぐ部活再開なの?」

「あぁ」

「じゃあ、あんまり疲れすぎないようにしなきゃね」

「だな。どれだけ追い込めるかにかかってるし」

「タイムはどう?いい感じなの?」

「去年の全中、二年男子100メートル走の優勝が11.02。今、最高タイムで11.08なんだよなぁ」

「相当速いじゃん!」

「優勝者がな。本気で追い込まないとヤバいかも」

「あと0.6秒なのに?」

「1秒近く差がある。結構絶望的かも」

たったほんの一瞬。
この一瞬で一年間の努力が報われないかもしれない。

一瞬で天国か地獄か決まってしまう世界。
そんな場所で都はずっと戦ってきたんだ。

「でもさ、全中に行くってだけでも私には信じられないくらい凄いことだよ。それだけでも努力は十分報われてるって思いたいよ」

「…ありがと。ちょっと元気出た」

都の大きい手のひらが
私の頭にぽんって乗せられる。

あ、罪。

ねぇ。それは本当に良くないよ、って思って、
もっと悲しくなった。
< 34 / 103 >

この作品をシェア

pagetop