向日葵の園
銃口の冷たさを憶えながら、ひっそりと静まり返った別荘の廊下を歩く。
一時的に解放されたけれど、
憂さんの視線がまとわりついて、背筋がゾッと冷える。

別荘に来て初めての雨が窓に滴っている。
風はまったくないのか、窓がガタガタと揺れることもなくて、
とても静かだった。

今朝はあんなに晴天だったのに、私の気持ちを表すみたいに
シトシトと降っている。

最愛…だったはずのお姉ちゃんを失ってしまったのに
悪魔は悲しむ余裕すら与えてくれず、
私に試練を突きつけている。

綴と都。どちらを選んでも私の心は闇に堕ちてしまうだろう。
それでも誰か一人を救えるのなら選択しなきゃ…。

静まり返った廊下にどこからか、心に染み込んでゆくようなメロディーが聴こえてきた。

この曲、知っている。
曲名はなんだっけ。

引き寄せられるようにメロディーの鳴るほうへと近づいていく。

足が止まったのは、お姉ちゃんが使っていたはずのベッドルームの前。
そうだ。確かここには…。
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