向日葵の園
「ねぇ、私ね。この曲を弾くたびにひまのこと、思い出すんだよ」

「私を?失恋に追い込んだのは綴なのにですかー?」

できるだけ冗談に聞こえるように笑ってみせた。
綴が都を奪ったりしなければ私は失恋しないで済んだかもしれないのに。

「違うよ」

「違うって?」

「ひまが失恋したから思い出すんじゃないよ。私の恋は叶わないから、思い出すんだよ」

「何言ってんの…。都と付き合ってんじゃん。マウント?」

「…ねぇ、ひま。お願い。敏感になってよ。私が言ってることに」

「全然分かんないよ!綴、私本当はずっと怒ってたんだよ?私の気持ち知ってたくせになんで都と付き合ったりしたの?酷いじゃん…」

「ひまの恋が終わればいいなって思ったからだよ」

「は…」

「ねぇ、都の足。わざと骨折させたんだって言ったら、どうする?」

ピアノの音が止まった。
鍵盤に細い指を乗せたまま、綴は真っ直ぐな視線で私を見ている。

「どういう…意味…」

「都なんて消えちゃえばいいのにってずっと思ってた」

「なんで…。だって好きだから付き合ったんじゃないの?すごくムカついたけど、好きになっちゃったんならしょうがないって私…何度も言い聞かせたんだよ…」

「都のことなんか全然好きじゃない。好きだなんて一度も思ったことない。私は、都がずっと憎かった。あんたの恋する気持ちを奪っていく都がずっと…!」

「綴…さっきから何言ってんの、ねぇ…!」

「好きだって言ってんの!あんたのことがずっと!私はっ…ひま…あんたのことがずっと好きだった。ちゃんと、恋って意味で」

「つづ…」
< 91 / 103 >

この作品をシェア

pagetop