向日葵の園
「あの都市伝説が本当なんだったらこの場所で都を消せるかもしれない。あいつだけをここに残してさ、あんたを連れて逃げ出すの。そんなバカなことすら本気で考えてた。でも実際は都市伝説なんて無くてさ。このまま元の生活に戻って、都は全中に出て、かっこいい姿でひまのこともっと虜にしちゃうんだ。そんなことは許せなかった。だから私、憂さんに相談したんだよ」

「憂さんに?」

「あの都市伝説を本当のことにできないんですかって。いっそ殺してくれてもよかった。悪魔にでもなんにでも魂だって売ったってよかった。そしたらさ、教えてくれたんだ。″山の中に足場が不安定で、堕ちたら死にはしないだろうけど結構な怪我くらいはできそうな場所があるよ″って。だから魚釣りをするふりをして誘い出したの。突き落とすわけにはいかないからさ、私が落ちちゃうふりをして。都は優しいから絶対に助けようとしてくれるって分かってたし。私まで骨折してしまう分にはどうだってよかった。手でも足でも、都が怪我をして走れなくなってくれさえすればなんだってよかった。ピアノが弾けなくなってしまったとしても」

「酷い…酷過ぎるよ…。そんな勝手な私利私欲で都は一年間の努力を潰されたんだよ!?最低だよ!私が喜ぶとでも思ったの!?」

「あんたに嫌われたって!嫌われたって…いいから都を消したかった」

「消えるわけないじゃん。都が走れなくなったって私はそれだけで都を好きになったわけじゃない!綴を嫌いになって都をもっと好きになって、そうなっちゃうことくらい想像できたでしょ!?」

「それでもよかったんだよ!ひまが私に恋をすることなんて絶対にない。天地がひっくり返ったって絶対に。どれだけ想ったって絶対に。それならせめてひまだって恋を失くしてくれたらよかったのに…。だからあんたから都を奪って…こんなことまでして…」

心の中でガラガラと大きな音を立てて
大切にしていた親友というお城が壊れていくような感覚がした。

許せない…。
都の夢を。信念を。この女は…。

ポケットの中の注射器をギュッと握り締めた。
怒りで拳が震えている。

これを綴に注入すれば、
今度こそ都を守れる…。

都に謝罪させて、それから綴を許すふりをして油断させて…。
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