向日葵の園
「へぇ。体内はまだまだ人間だったか」

言いながら憂さんは廊下に待機させていたらしい台車を運び入れて、
都と綴が折り重なるようにして乱暴に乗せた。

「みっ…都っ!都!…なんで殺して…」

「放っておいたほうが可哀想でしょ。さっさと殺してあげなきゃ。ここまでの絶望はもう向日葵にする価値も無さそうだし。せめて種にして有効活用してあげるよ。ほら、ついてきて」

銃口を向けられて脅される。
何もかも、何もかもを失ったのに
目の前に突きつけられる死への恐怖に抗えない。

ここで私だけが逃げ出せたとしても
私にはもう何も残されていないのに。

お姉ちゃんも好きな人も親友も全部壊れてしまった。

生きたい理由なんて、もう…。

憂さんは自分が使っていたベッドルームに台車ごと入室して、
私のことも中へと促した。

クローゼット、にしか見えない扉を開けると、
それはエレベーターだった。

「まさか…」

「俺って実は結構めんどくさがりでね。いちいち下まで降りる手間を省きたかったんだよ。コレは地下室まで直通です」

台車と私をエレベーターに押し込んで、
憂さんは青と赤の、青のほうのボタンを押した。
グンッと体が重力を失ったみたいに、下へと降りていく。

また連れ戻されてしまった冷たい地下室。
お姉ちゃんが眠るカプセルのあの部屋へと誘導される。
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