ラスボスの夫に殺される悪役令嬢として転生したので、生き残ってみせる!と意気込んでいたらなぜか夫がデレ始めて戸惑っています

4 本人

(ああ、やっぱりここの料理長の料理は美味しい!)

 キャロラインは目の前に出された料理を食べながらその美味しさに浸り、嬉しそうに頬を染める。頭を打つ前は料理に対して文句ばかり言っていたが、頭を打ってからは料理が美味しくてたまらない。毎回料理に文句を言われていたのに、急に美味しいと褒め称え始めたキャロラインに料理長は初めの頃は驚いていたいたが、最近はキャロラインのためにより一層力を入れているようだ。

(どうしてこんなに美味しい料理をあんなにまずいと思っていたのかしら?不思議でならないわ。……いつも不満ばかり口にしていたから、不満に思うことばかりに目がいっていたのね、きっと)

 柔らかいお肉をナイフで切ると、一口頬張る。お肉から滲み出る肉汁とソースが程よくマッチしていてたまらない。キャロラインはまた嬉しそうに微笑みながら口をもぐもぐしてると、ふとクロークと目が合う。

(え、すごい凝視されてる……)

 クロークはあり得ないと言わんばかりの顔でキャロラインを見ていた。

「本当に、どうしてそんなに変わってしまったんだ?初めて一緒に食事をした時は、こんなに不味いものは食えないだの、呪われた人間と一緒に食事をするなんて耐えられないなどと喚いていたのに」

(あー、そんなこと言ってしまっていましたね……)

 頭を打つ前のキャロラインの記憶はちゃんとある。確かに、クロークの言うような言動行動をしっかりとっていた。

(本当に、酷くて最低な女だわ、私)

 キャロラインとしての記憶はあるからキャロラインであることには変わりはない。だが、頭を打ったことで転生前の記憶が蘇り、そのせいもあって物事への捉え方もすっかり変わったのだろう。意識の向け方一つでこうも全てが変わってしまうのだ。

「その節は本当に申し訳ありませんでした。頭を打ってからは料理の美味しさに気づきましたし、クローク様のことも呪われた人間だから一緒にいたくないとは思いません。……クローク様は私を嫌って一緒に食事を摂らないのだと思っていましたが、私が最初にそんなことを口走ってしまったからに他ならないのですよね。今まで一緒に食事をなさらなくて当然です。本当に、申し訳ありませんでした」
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