ラスボスの夫に殺される悪役令嬢として転生したので、生き残ってみせる!と意気込んでいたらなぜか夫がデレ始めて戸惑っています



「社交パーティーへ連れていく?私をですか?」

 キャロラインが頭を打ってから二週間後。応接間に呼び出されたキャロラインは、目の前にいるクロークへ素っ頓狂な声をあげながら聞き返した。
 クロークは絶対にキャロラインを社交の場へ連れて行ったりはしなかったし、キャロライン自身も絶対に連れていくなと言っていた。キャロラインたちがヒロインに出会うのは社交パーティーの場だが、それはキャロラインの実家がパーティーの主催だったからで、そうでなければクロークが社交の場にキャロラインと一緒に出るわけがない。それなのに、どういう心境の変化だろうか。
 
「ああ。それとも、俺と社交の場に出るのはやはり嫌か?」
「い、いえ。むしろクローク様がお嫌なのではありませんか?私のような人間と一緒に出歩けば、クローク様の名に傷がつきます」

 悪女と名高い自分と一緒にいれば、元々あまり評判の良くないクローク自身の評判がさらに悪くなる。

「別に俺の評判が悪くなろうがなるまいが、今更なことだ。君が嫌でないのであれば問題ない。社交パーティーは三日後だ。ドレスはあるもので君が着たいものを着ればいい。それじゃ」

 そう言って、クロークは応接間から出ていく。クロークに続いてレオも出て行こうとするが、ドアから出る間際、キャロラインの方をみてにっこりと微笑んでいった。残されたキャロラインはポカンとしている。

(え、待って、本当にいいの?私がクローク様と一緒に社交パーティーなんかに行っていいの?しかもドレスは好きなものを着ていいって言われたけど……どうしよう?どれを着ればいいのかわからない!)

 頭を打つ前のキャロラインは派手好きだったが、今のキャロラインはむしろ派手なものが苦手だ。クローゼットの中からドレスを選び出すのも一苦労しそうで眩暈がする。

 ハッとして、近くにいたユリアに視線を向けると、ユリアは首を傾げた。キャロラインが頭を打ってから屋敷の人間とは少しずつ打ち解けてきたが、一番打ち解けるのが早かったのがユリアだ。
 最初はかなり警戒していたが、最近は警戒心も解けつつあり、キャロラインとは良好な関係を築いている。

「ユリア、私の持っているドレスの中で、一番控えめなドレスってどれかわかるかしら?」
「……控えめなドレスですか?うーん、以前のキャロライン様はそれはそれは派手なものがお好きでしたからね……。あっ、すみません」
「ふふっ、いいのよ。その通りだから」

 ユリアが思わず謝ると、キャロラインは苦笑して首を振った。それをみて、ユリアはホッと胸を撫で下ろしてまた考え始める。

「キャロライン様がお持ちのドレスの中で一番控えめなドレスと言ったら……ああ、そうですね!」

 ぽん、と手を打ってユリアは目を輝かせた。
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