ラスボスの夫に殺される悪役令嬢として転生したので、生き残ってみせる!と意気込んでいたらなぜか夫がデレ始めて戸惑っています



 会場を後にしたクロークとキャロラインは、その後一言も発することなく馬車に揺られている。

(まさかクローク様が助けてくださるとは思わなかった)

 あの場ではとにかくルーベルト周囲の貴族たちの気がキャロラインから逸れるまで耐えるしかない、そう思っていた。だが、クロークがキャロラインを助け、会場から連れ出してくれた。

「あの、クローク様」

 恐る恐るキャロラインが声をかけると、肘をついて窓の外を眺めていたクロークは視線だけをキャロラインに向ける。

「先ほどは、助けていただいてありがとうございました。ですが、社交の場をあんなに早く抜けてしまってよろしいのですか?」

 キャロラインの質問に、クロークはハァ、と小さくため息をついてから今度こそキャロラインへ顔を向けた。

「別に、そもそも社交目的で参加したわけじゃない。君を少し試してみたかっただけだ。まさか俺の瞳のドレスを着た上に、侮辱された俺のことまで庇うとは思わなかった。君を助けたことは、そのお礼みたいなものだ。別に気にしなくていい」

(私を、試す……。なるほど、わかったような、わからないような)

 ぼんやりとクロークを見ていると、クロークはキャロラインを見つめながらまた小さくため息をつく。

「なぜあそこで俺を庇った?あんなもの、適当に流しておけばいいだろう。俺の瞳のことをあれこれ言われるのは今に限ったことじゃない。それに君がわざわざ言い返すようなことでもないだろう」
「いえ、私は……親同士が決めた白い結婚かもしれませんが、それでもクローク様の妻です。夫が失礼なことを言われたのに言い返さないだなんて、そんなことできません。それに、そんなに美しい瞳なのに、呪いだの不吉だの言われるのはなんだか許せなくて」

 ムッとしてそう言うキャロラインに、クロークは驚愕の表情を見せる。
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