ラスボスの夫に殺される悪役令嬢として転生したので、生き残ってみせる!と意気込んでいたらなぜか夫がデレ始めて戸惑っています



(まさかこんなに早くヒロインたちに会うことになるなんて)

 キャロラインの目の前には、ヒロインである伯爵令嬢のマリアと、クロークの双子の兄であるトリスタンがいた。マリアとトリスタンはすでに出会って挨拶を済ませ、意気投合しているようだ。

「初めまして。マリア・ユーデウスと申します」
「初めまして。キャロライン・レギウスと申します」

 令嬢同士、挨拶を済ませてにっこりと微笑む。マリアは金色のサラサラな長い髪にトルマリン色の可愛らしい瞳、小さく可愛らしい見た目で庇護欲をそそる。

(やっぱり可愛らしいわ……!ザ、ヒロインという感じね)

 チラ、とクロークの方を見ると、マリアを見ながら無表情だ。別段、心が浮き足立ってる様子は見えない。

「クローク、元気そうで何よりだ。初めまして、弟がいつもお世話になっています」
「初めまして、お兄様。キャロラインと申します。ご挨拶が大変遅くなってしまい、申し訳ありません」

 キャロラインとトリスタンは小説内でもこの日が初対面だ。クロークとの結婚を認めたくなかった頭を打つ前のキャロラインは、クロークの家の人間と一切挨拶をしていない。
 クロークと同じ漆黒の髪の毛はクロークよりも短く、トリスタンの瞳はアクアマリン色で美しい海の色をしている。クロークより少し男らしい雰囲気だが、見た目はやはり小説内で一・二を争うほどの男前だ。思わず見惚れていると、突然クロークがキャロラインの肩をグイッと引き寄せた。

 驚いてキャロラインがクロークを見上げると、クロークは少し不機嫌そうだ。

(え、クローク様どうしたのかしら?もしかして、ヤキモチを妬いてらっしゃる?)

「おや、君たちは随分仲が良くなったんだね。結婚当初はお互いにいがみ合い目も合わせなかったらしいじゃないか。それなのに、キャロライン嬢が頭を打ってからまるで人が変わったと聞いてはいたが……それが原因かな?」

 トリスタンの言い分にキャロラインは思わず作り笑いをすると、マリアは両手を胸の前に合わせてまあ!と微笑んだ。

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