~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
「自分のことで、こんな気持ちになったことはないのにな」

 子供の頃、寂しさに胸が締め付けられることはよくあったが、こんな奇妙な苛立ちを抱えたことはない。自嘲するように、ルゼは首筋の内側を撫でた。そこには古傷の跡があり、いつどこで怪我したのか覚えていないが、嫌なことがあるとしくしく痛む。

 勉学でも運動でも、特に秀でたところのない自分。
 それに今まで不満を覚えたことがなかったのは、多分、なにかをしたいという明確な願望が自身の中に存在しなかったから。

 やれと言われたことをそれなりにこなす能力はある。だが、それだけ。
 ひとつのことをつき詰めたいという欲もなく、こうして役割が不明確になると、途端にやる気を失くす。所詮自分はその程度なのだという諦めを常に心の内に感じている、虚しい人間。

(だってしょうがないじゃないか。僕は家族に――たったひとり知る父親にすら必要とされたことがないんだから)

 その源が自らの孤立した家庭環境にあることはなんとなく察していた。
 今も、家族に対して思うことはほとんどない。

『ルゼ、当家の者として恥ずかしくない生活はできているか?』
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