～転生悪役令嬢の裏道攻略～ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

（シェリンさん、なのかしら）

　ふと後ろ姿でそんな気がしたが、もうその時には令嬢は城の中に姿を消している。もし、ミリィの見間違いでなかったとするならば、どうしてこんなところにシェリンが現れることになったのか非常に気にはなるが、ミリィもそれ以上の思考力を今割くことはできない。もうお目当ての部屋はすぐそこなのだ。

（成功を祈っていてくださいね、御嬢様）

　先刻見たことは一度忘れ、ぐっと拳を握り込むと、上階に至る階段に足をかける。

　重厚な石造りの螺旋階段をすり足で登りきると、目指す階の廊下が見えてきた。パーティーの騒がしさとは正反対の静けさに胸をひりつかせつつ、踊り場の影から顔を覗かせて人がいないことを確認。廊下に踏み出すと、その先を急ぐ。
　やがてひとつの曲がり角が見え、再びそこへ身を隠すと廊下の先を見やり、息を詰めた。

（あそこだ）

　ところどころに金の装飾が施された、豪華な扉。その両脇に佇むのは、デール王太子に教わった通り、明らかに通常とは意匠の異なる、真珠めいた光沢の鎧を着た騎士たち。あれが、王室近衛に違いない。