~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
(どどどどーしましょう。やはりわたしには無理な仕事だったのかしら)

 高価な衣服が束になって詰め込まれたクローゼットの中も探してみるが、ここは宮女の管轄だろうし、こんなところには隠すまい。
 母に代わってもらえばよかった――ミリィはカーテンの裏側を調べた後、そんな弱気な考えを追い払うため、バルコニーにとぼとぼと踏み出す。

(あらら、小雨がぱらついて)

 鼻先に、ぽつりと疎雨(そう)が滴った。
 夜で見にくいが、目を凝らすと闇の中に無数の白線が浮かんでいるように見える。それらはバルコニーに弾け、全体をしっとりと濡らし始めている。

(ここは調べていませんでしたね)

 バルコニーは手入れされる頻度も低そうで、ものを隠すのにちょうどよいかもしれない。そう考えたミリィは、白い石造りの足場を端から端まで点検し始めた。
 いくつもある植木鉢を持ち上げて、土の中になにかが隠れていないか。床の石材が外れるようになっていて、秘密の隠し場所が出てきたりしないか、とか。
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