野いちご源氏物語 〇八 花宴(はなのえん)
右大臣(うだいじん)様の姫君(ひめぎみ)も、二条(にじょう)(いん)若紫(わかむらさき)(きみ)も気になるし、さらには、
左大臣(さだいじん)(てい)を長らくお訪ねしていない>
とご正妻(せいさい)も気にかかる。

結局、まずは二条の院にお帰りになったわ。
しばらくご覧にならないうちに、姫君はどんどんかわいらしくなっていかれる。
源氏(げんじ)(きみ)は姫君を引き取ってから、
<何もかも私の希望どおりの女性にお育てしよう>
と思って教育しておられたのだけれど、それが(かな)う日も近そうなのよ。
<男の私が教育したのでは、男性に慣れすぎてしまうかもしれない>
ということだけがご心配だった。
いつもどおりお話をしたりお(こと)を教えたりなさって、夜になってから左大臣邸へご出発なさる。
姫君は寂しく思っているようだけれど、もう引きとめることはなさらない。
これもご教育の成果ね。

源氏の君が左大臣邸にご到着なさっても、やはり奥様はすぐには出ていらっしゃらない。
あちらこちらの女性のことを考えながら、源氏の君はお琴をお弾きになる。
「あいかわらずの冷たいご態度だ」
と独り言をおっしゃった。

そこへ左大臣(さだいじん)様がお越しになって、先日の桜の(うたげ)のことをお話しになる。
「私はずいぶん長く生きまして、四人の(みかど)の時代を生きてまいりましたが、これほどまでに詩も(まい)も音楽も見事な時代というのは初めてでございます。桜の宴では命が伸びるような気がいたしました。あなたがそれぞれ得意な人たちをお選びになったそうでございますね。年老いた私まで舞いたくなってしまうような、すばらしい宴でした」
と源氏の君をおほめになったの。

源氏の君は、
「私が特別に何かをしたわけではありません。帝のご命令に従って、ふさわしい人を探しただけでございます。それよりも頭中将(とうのちゅうじょう)の舞は見事でした。長く語り継がれるようなご立派さでしたね。左大臣様も舞ってくださいましたら、皆様よろこばれましたでしょうに」
と申し上げる。

奥様はまだ出ていらっしゃらない。
義兄(ぎけい)でご親友の頭中将様がお越しになって、ご一緒にいろいろな楽器を演奏なさった。
源氏の君にはこの方が気楽で楽しそうなのだから、困ったものよね。
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