迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 紅汰にバナナを手渡したあと床を拭く。

 こういうのって、いつから一緒に片付けてもらえばいいんだろう。いつもお姉ちゃんに聞こうと思うのに、すぐ忘れちゃう。

 慣れない育児、しかも双子なので、寝る時間も足りないくらい目まぐるしい日々を送っている間にふたりはこんなにも大きくなった。

 育てているというより、なんとか生かしている、と表現する方が正しいのではないかと、母親として自信を失いそうになるときは日常的にある。

 ただでさえ片親で寂しい思いをさせているというのに……。

 父親である橙吾さんの名前に色が入っているのにちなんで、紅という漢字を使った。桜子も、私に桃という植物の名前が入っているからお揃いにした。

 由来を説明するのが先か、父親について打ち明けるのが先か、どちらになるのかわからないけれど、それまでにいい加減心の整理をしなければいけない。

 ふたりで過ごした四カ月の何十倍もの時間が経過しているのに、まだあの頃の記憶のなかで私は生きている。

 別れて、仕事に邁進して、別の人と付き合っていたら風化したかもしれない。でも目の前にいるこの子たちの存在が橙吾さんそのもので、消し去るなんてできないのだ。
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