迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「待たない」

 即座に言い返して、手を振り解こうとしたが離してもらえない。

「橙吾さん、ケーキを買いにきたんじゃないの?」

 わざと強く振る舞うことでしか平静を保てず、声音も態度も尖ったものになる。

「桃花を忘れられず、なんとなく買いにきていただけだ」

 動揺が走って顔が強張った。至近距離で見つめ合っているので、こちらの感情は包み隠さず伝わっているだろう。

 結婚指輪は……はめていない。でも仕事上つけられないだけかもしれないし。忘れられないって、どういう意味なの?

「結婚したのか?」

 そうだよ、と肯定すればいいだけなのに、嘘はよくないという感情が邪魔をする。

 双子の前だし、まだ意味はわからなくても、人としてやってはいけない行為はしたくない。

「この子たちは双子? 何歳?」

「どうしてそんなこ――」

「ももちゃん!」

 自分でもどうしたらいいのかわからなくて、心のもやもやを消すため質問返しをしようとしたときだった。
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