迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「よろしくね。ももちゃん、着いたら一応連絡して」

 ふたりの度外れなやり取りに口を挟みたいのに、紅汰の癇癪を治めるのに必死でどうにもならない。紅汰に水筒のお茶を飲ませて、リュックに入れておいたおにぎりを手渡す。

 意識が食べ物に向いた途端、消火器をあてられたかのように激情は鎮火した。桜子にもお茶とおにぎりを勧めたが首を横に振られる。

「さーちゃんの好きなおうた流すね」

 何度も繰り返し聞いている手遊び歌のプレイリストを再生し、一緒に手を動かすと桜子は笑顔になった。

 よかった、これで出発はできる。

 まだミルクを飲んでいたときに桜子は泣きすぎて嘔吐したトラウマがあるので、強行突破はこわくてできなくなった。

 ほっとして深い息をつく。久し振りに、まともに酸素を吸えたような感覚だ。

 こっちが慌ただしくしている間に店長は店に戻り、橙吾さんは運転席に座って椅子とミラーの位置を直していた。

 強気な彼には勝てないのでおとなしく従おう。店長にも考えがあっての行動だろうし。それに、これが本当に最後になる。
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