迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「口開けて」

 おとなしく従った桃花の口内は真っ赤になっていて、予想を遥かに超える出血量だった。

「お茶飲んで」

 水筒を手渡すと、桃花は素直に飲む。その間に俺はアルコールで手を消毒する。

「もう一度、口開けて」

 新しく血が滲み始めた箇所が確認できたので、ティッシュを巻きつけた右手の親指を突っ込んだ。

「んあっ」

 驚いた桃花が変な声を出し、目をまん丸にする。遅れて俺の腕を掴んで、目で訴えてきたが無視して圧迫を続けた。

「じっとしてろ。止まるまでの辛抱だ」

 言い聞かせると桃花は眉尻を下げた困り顔で俺を見る。

 頭や口は血管がたくさん通っているから出血量が多くなる。血の味がするし、それを飲み込むしかないから辛かっただろうな。

「さっきの話だけど、桃花と結婚しても、消防士は辞めない」

 桃花の眉間に皺がぐっと寄る。

「よく考えてみてくれ。三十五の大の大人が、どうして仕事をするのに親の許可がいるんだ」

 子どもたちは仲よく踊り続けている。童謡や手遊び、ダンスが投稿されている動画配信サービスのチャンネルをランダム再生にしているので、飽きるまでは大丈夫そうだ。
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