迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 根気強くミニトマトを出し続けた桃花の労力を労った返事を送り、佐橋を見る。

「あえて言わなかったんですけど、実は少し前に奈緒さんを見たんですよね」

「どこで」

 身体の中心に冷たいものが走る。

 消防署で働き始めてまだ両親の反発が強かった頃、俺を説得するために何度か奈緒はここを訪ねてきている。

 訓練中遠巻きに見学をしたり、業務が終わる時間に外で待ち伏せをしていた程度だが、佐橋を含めた隊員数名は奈緒の存在を知っている。

「拗らせたくないので、〝もしかしたら〟という前提で聞いてくださいよ」

 声を潜めた佐橋に目配せをして外へ誘う。事務所を通り過ぎて屋外に出ると、春の生暖かい日差しが降り注いでいた。

「まだ時間あるのに、悪いな」

「いいですよそんなの。……見かけたのは、ポワッタビジューの近くです」

 反射的に溜め息がこぼれそうになったのをなんとか堪え、目を閉じて感情を静まらせる。
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