迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「ままぁ、め、いたい」

 紅汰がめずらしくはっきりと言葉を発する。それほど目が痛いのだろう。

 私はまだそこまで感じていないけれど、確実に煙が広がっている。

 橙吾さんが言っていた。火災による死亡原因は、ほとんど煙によるものだと。

「立体駐車場に行こう」

 そこなら多少なりとも換気されるので屋内にいるよりましだ。

 涙で視界が奪われた双子はもう歩けない。両腕に担いで、時間をかけて駐車場に移動する。しかしみんな考えることは同じで、自動ドアの前にたくさんの人が押しかけて外に出られなくなっていた。

 順番待ちをしようにも、うしろから無理やり押されて潰される。

 床に下ろしていた紅汰が「ぎゃああああ!」と腹の底から力を振り絞って奇声を上げた。

「こうくん!」

 こんな状況では子どもの声に耳を傾ける者などいない。おかまいなしに四方八方から押されて、紅汰を抱き上げることすら難しい。
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