迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 死にもの狂いでふたりと一緒に人混みから脱出し、肩で息をしながら額に滲んだ汗を手で拭う。

「お茶を、飲もう」

 持参していた水筒から双子にお茶を飲ませ、まずは呼吸を整えた。

「どうなるのかしらね」

 不意に声がして振り返ると、すぐ近くに老夫婦が座っていた。女性の方は、もうなにもかも諦めた表情でいる。男性の方は、すべてを受け入れているかのような落ち着きがあった。

「足が悪くて、動けないんだ」

「こんな最期を迎えるなんて、人生なにがあるかわからないものね」

 そんな後ろ向きの言葉を使わないでほしい。

「これだけの火災です。様々な近隣地域から消防隊員が来ているはずなので、大丈夫ですよ」

 火災報知器が鳴ってからかなりの時間が経過しているはずだ。おそらく橙吾さんも現場に到着している。

 橙吾さんの姿を頭に浮かべただけで、さっきまで絶望していた心がほんの少しだけ冷静さを取り戻す。

 積まれているカゴを見つけ、人数分持ってきた。
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