迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「今日でもいいですか? 店の前まで来てもらうか、もしくは別の場所でも……」

 桃花さんが話している途中で、また別の客が入ってきて店内の空気が動く。俺たちと同じように会話を続けていた隣の客は、すでに会計を終えていたようですぐに立ち去った。

 桃花さんはケーキを手際よくショーケースから出して箱詰めをする。会計をしているときに、「ここに来るよ」と端的に伝えて名刺を差し出した。

 現場の部隊で勤務するため普段はほとんど使わないが、ごくまれに消防法違反がないか建物の立ち入り検査業務をするときがあり、その際に相手側へ渡したりする。

 財布に入れておいてよかった。

 桃花さんは両手で名刺を大切そうに受け取ったあと、安堵したように微笑んだ。

 挨拶をして店をあとにし、その足で佐橋の家に向かう。

 佐橋もひとり暮らしをしていてすぐ近くに住んでいるのだが、職場で頻繁に顔を合わすのでプライベートで会うことなどほとんどなく、マンションを訪ねるのは片手で数えられる程度だ。

 インターフォンを押して呼び出し、オートロックを開錠してもらって部屋へと移動する。目と鼻の先までやってくると、タイミングよく扉が開いて佐橋が顔をのぞかせた。
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