迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「それで、桃花ちゃんと会えたんですか?」

 佐橋は早速ショートケーキを食べている。俺はまず珈琲が入ったマグカップに口をつけた。

「会えたよ。キャットフードを間違えて買ってしまったから、夜に譲ってもらうことになっている」

「それって」

 佐橋は中途半端に言葉を切った。なんとなく考えていることがわかって先に口を開く。

「お礼に、食事に誘うつもりだ」

「おおお」

 素直な反応をした佐橋のショートケーキはもう三分の一しか残っていない。俺も食べようとガトーショコラにフォークを刺す。

 三カ月前にパティシエのひとりが辞めて、今は店長と桃花さん、あともうひとりしかケーキを作る人がいないらしい。来月から新しい人が入ってくるので、クリスマスシーズンに間に合ってよかったと胸を撫で下ろしていた。

 断片的に聞いているだけで頑張りすぎていると感じるのに、桃花さんは一切愚痴をこぼさず、それどころか仕事が楽しくてしかたないと笑っていた。

 消防士もけっして楽な業務ではないので、体力的につらく、危険と隣り合わせで心が休まらないなどの不満はよく耳にする。

 だから桃花さんの前向きな姿勢はすごく好感が持てるし、一緒にいたら自分の向上心も上がるような気分にさせられた。

 口に含んだガトーショコラのほろ苦い甘みが、疲れた身体にじんわりと沁みる。
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