迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「お待たせいたしました」

 箱を持ってレジへ移動し、お会計をしていると、不意に男性からの熱視線を感じて手を止めた。

 不思議に思って小首を傾げたら、男性ははっと我に返ったように気まずそうにしている。

 もしかして私の額にある傷を見ていたのかもしれない。右の眉毛の上辺りに二センチほどあり、ケロイドになっていて少しぷっくりと膨らんでいる。普段は下ろした前髪で隠しているのだが、仕事中は上げなければいけない。

 小学六年生の頃に負った傷なのでもう白くなっていて肌と馴染んでいるし、自分はまったく気にしていないがやはり多少は目立つのだと思う。

 でも、小さな傷跡が残る程度の事故でよかった。人生なにがあるか本当に分からないから……。

 久し振りにあの日の出来事が脳裏に浮かんだところで男性が小さく咳払いした。この場から離れていきかけていた意識が戻ってきて、静かに深呼吸する。

 接客中なのだから他のことを考えていたら駄目だ。
< 4 / 244 >

この作品をシェア

pagetop