迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「お疲れさま。どこ行っていたの?」

「ラーメン食べてきました」

「おー、いいね」

 軽快なやり取りをして、男性が俺を視界にとらえて会釈する。失礼にならないようにこちらも返すと、男性はすぐに桃花さんに向き直った。

「ももちゃん、リップ忘れていたよ。ピンク色の、なんかお洒落な瓶に入ったやつ」

「えっ、気づかなかった。持っていますか?」

 桃花さんは両手のひらを男性に差し出す。

「いや、置いてきた」

「残念」

 わざとらしく大袈裟に項垂れた桃花さんの様子は、誰が見ても冗談なのがわかる。

「気をつけて帰ってね」

「はい。ありがとうございます」

 場を長引かせることなく切り上げる振る舞いはスマートで、大人の余裕が醸し出ている。去り際にもう一度俺へ目礼した男性は颯爽と去っていった。

 ももちゃん、か。女性をちゃん付けで呼ぶのは苦手なので、小さい子ども以外そんなふうに呼んだことはないが、たしかに彼女の雰囲気にはあっている。

 正直、桃花さんって呼ぶより百倍いい。
< 48 / 244 >

この作品をシェア

pagetop