迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「すっぴんも可愛いよ。見せてくれてありがとう」

 閉じ込められた腕のなかで頭をこくこく上下に振る。

 これが自分と同じ人間の身体なのかと衝撃を受けるほど胸板は厚く、物質のように固い。

 どうなっているの、これ。

 抱き締められてから行き先を探していた自身の手を橙吾さんの胸にあてた。一応遠慮してさすったけれど、すぐに「なに?」と身体を引き離される。

 いろいろと恥ずかしい。ファンデーションをしていないから、熱が集まった顔は真っ赤になっているはず。

「なんでもない」

 橙吾さんはなにも言わず、私の手を引いて部屋の奥へと進み、掃き出し窓の前で「見て」と外に視線を投げた。

 夕暮れが始まっており、灯篭に明かりがついている。水面と木々に反射した光が幻想的で、先ほどとは違った雰囲気に感嘆の溜め息がこぼれた。

「桃花が好きそうな景色だなって、さっきまでひとりで眺めていた」

「うん、好き」

 静かに眺めていると、うしろから私を包み込むように逞しい腕がお腹で交差した。

 ドキドキと激しく拍動はしているけれど包み込まれる体温が心地いい。

 温かくて、安心する。

 橙吾さんの腕にそっと手を置くと抱き締める力が強くなった。
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