迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 橙吾さんは優しい力で頬をむにゅっと潰してから、私をぎゅうっと抱き締めた。

 初めてキスができて嬉しいのだけれど、スキンシップはこれ以上先に進まないのだろうか。

 中途半端にスイッチを押されて、昂った感情が行き場をなくしている。たまらず橙吾さんの腕を掴んで訴える眼差しを送った。

「そんな可愛い顔して、どうした」

 真顔で問われて複雑な想いがさらに大きくなる。

「……これ以上触れると、歯止めが利かない」

 橙吾さんは苦笑いをこぼして私の頬から手を外した。

「それは駄目なことなの?」

 そのつもりで旅行に来ているのだし、私としては願ったり叶ったりだ。

「あと二時間ほどで食事になる。布団の準備もまだだ」

 説明を受けてはっとする。

「ほんとだ……」

 橙吾さんにしがみついたまま部屋をぐるりと見回す。

 なんとも言えない空気が流れ、気分の切り替えが得意な方だけれどさすがに気まずくなった。平静を取り戻すと、自分の言動に後悔の念が押し寄せる。

「ごめん。引いたよね」

 この発言も反応に困るものだと、口にしてから気づいてさらに頭を抱えたくなる。

 最悪だ。せっかく雰囲気のある素敵な場所に連れてきてもらったというのに。
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