幽霊姫は止まれない!
 オスキャルのように私が騎士ならば話は変わっただろうが、私自身が今から魔力を手に入れたいかと聞かれれば、正直否だった。

(でも魔女の秘薬は別よ!)

 巡り会えるのが奇跡という魔女しか作れない希少性、しかもなんでも願いが叶うなんて効果まであるならば絶対欲しい。絶対飲んでみたい。もし無事に手に入れることができたら、オスキャルには悪いが絶対に『魔力が欲しい』なんてつまらない願いはしないだろう。できればもっと、笑い転げるようなそんな願いを叶えたい。そのことを心の中で謝罪しながら、私は彼の手をぎゅっと握った。

「……はぁ。結局いつもこうなるんだよなぁ」
「行くわよ! 魔女の森!」

 諦めたような声を漏らすオスキャルに堂々と宣言すると、口ではそんなことを言ったオスキャルだが、眉尻を下げて笑ってくれる。なんだかんだで優しい彼に、私も口角が緩んだのだった。
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