幽霊姫は止まれない!
「魔力を自在に操れる魔女の薬なら、それも夢ではないと思うの。お願い、オスキャル」

 心の中で『きゅるん』という効果音を奏でながらじっと見つめると、うぅん、と唸りながら上下左右をせわしなく順番に見たオスキャルが大きなため息を吐いた。

「――わかりました。その代わり、絶対俺から離れないでくださいよ」
「シャァッ!」
「エヴァ様?」
「あっ。えぇっと、ふふ、絶対オスキャルから離れないわ! ずっと一緒よ」
「くっ、かわ……じゃなくて、はい。ず、ずっと一緒です」
(本当は自分の魔力なんかに興味はないんだけど)

 正直、途中で失ったならともかく私の場合は生まれた時から魔力を持たなかったのだ。魔力があるありがたみを実感したことがない分、今更欲しいとも思わない。

 確かに魔力があれば、全身に纏って寒さや暑さを軽減したりとかなんか色々出来るらしいけれど、物語の中のように空を飛べたり火の玉を出したりできるわけでもないし、そもそも訓練しなくては使えないのだ。
 それに使いこなせていない人間が魔力を纏っても中途半端で、暑すぎる部位があれば逆に冷えすぎている部位もあり結局は防寒具に頼ることになるという。
< 9 / 570 >

この作品をシェア

pagetop