幽霊姫は止まれない!
 そんなことを考えながら、半分以上興味を失ってしまった私は帰りにお土産何を買おうか、なんて思いつつ訓練をつけているオスキャルの方を横目で見た時だった。

「それに、誰も見たことがないから妖精と呼ばれている、と聞いたからね」
 ポツリと溢すように告げられたその言葉にギシリと固まる。
(呼ばれていると、『聞いた』?)
 その言い方だとまるで誰かが私のことを妖精なのだと彼に教えたみたいではないか。しかもご丁寧にそれっぽい理由も作って、だ。
 その事実に気付きドキリと心臓が跳ねる。
 ――あぁ、これは間違いない。ここまで来た意味はあったのだ。

「陰謀だわ……!」
「え?」
「誰かが私を妖精に仕立て上げて売り込んだのよっ」
 誰かとは誰だ。目的はなんだ。貶めるのではなく、あえて評判をいいものへすり替える理由は何がある?
「ちょ、エヴァリン嬢!?」
「ありがとう。私、急激に楽しくなってきたわ!」
「そ、それは良かった、のかな……?」
 突然テンションの上がった私にタジタジとしたミック公爵令息を無視し、私は事件の真相へ少し近付いたことに心を躍らせたのだった。
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