幽霊姫は止まれない!
 私に言い当てられて恥ずかしいのか、藍色の瞳を見開いたオスキャルが焦ったように声を上げる。そんな彼を宥めるように、私はポンと肩を叩いた。
 ソードマスターなんて立っているだけで色んな令嬢から声をかけられるだろうが、彼のこの様子を見る限り女性には慣れていないとよくわかる。

(お兄様はいつも余裕な笑みを浮かべながら歯が浮きそうなセリフをいつも垂れ流しているもの)

 それに比べ、私のからかいひとつで動揺してしまうなんて、まさに青春を訓練に捧げた代償なのだろう。そんな時間を取り戻すべく今から可愛い恋人と青春を謳歌したいのだ、間違いない。多分。
 だがいくら魔女の秘薬を使ったとしても人間を生成するのは流石に禁忌だ。彼の主君としてそこは見逃せないので、私は折衷案を提示することにした。

「せめて生身の人間ではなく人形を頼むのよ」
「は? に、人形?」
「大丈夫よ、貴方が求める高性能なオプションを決める時は席を外してあげるわ。聞き耳は立てるけど」
「高性能なオプションって、俺にどんな人形を……というか、どんな用途の人形を買わせようとしているんですか!? というか席外しても内容は聞くのかよッ」
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